研究概要 |
ネコ舌つきだし筋・ひっこめ筋支配運動ニューロン(P-.R-Mn)で同側及び対側下歯槽神経刺激によって誘発されるIPSPについて, その抑制性シナプスの結合様式をしらべた. P-Mnにおいては両側下歯槽神経の抑制性シナプスは主に樹状突起部に結合しており, R-Mnでは両側下歯槽神経の抑制性シナプスは共に細胞体部, 樹状突起部に結合していることを明らかにした. つぎに大脳皮質舌運動領(C_x), 舌神経, 下歯槽神経刺激で3つの成分からなる過分極電位がP-Mnで誘発されることが分かった. 第1のIPSPはストリキニンで遮断され, 細胞内Clイオン濃度上昇で逆転し, 膜を過分極すると脱分極電位に逆転した. 第2のIPSPはストリキニン投与で増大しピクロトキシンで遮断されるGABA-IPSPである. 第3の過分極電位はストリキニン及びピクロトキシンに抵抗性で, 膜を過分極しても脱分極電位に逆転しない. この電位をL-HPと命名した. またC_xの条件刺激は舌神経の試験刺激で誘発したEPSPを完全に抑圧し, この抑圧にはシナプス前抑制が関与していることを推察した. C_x刺激で誘発した短潜時EPSPは舌神経の条件刺激では抑圧されなかった. すなわちP-Mnの興奮は主に上位中枢からの情報で惹起されていることが分かった. つぎに嚥下の神経機構を明らかにするため軟体動物アメフラシで実験をおこなった. そして左右で2個のニューロンが咽頭の運動を調節していることが分かった. このニューロンは膜の脱分極状態で律動性の群放電を示し, 過分極状態で群放電を停止した. すなわち口腔に食物が入ると, このニューロンが律動性の群放電を示し, 食物を嚥下することを明らかにした.
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