研究概要 |
研究者らは先に, ウシ胎仔フォスフォフォリンに対するモノクローナル抗体の調製に成功した. さらに研究代表者らは, ウシ胎仔新生骨組織中にもこの抗体によって認識される物質があることを, 免疫組織化学的に初めて明らかにした. 本研究は, このフォスフォフォリンと抗原類似性を持つ物質の生体内分布をさらに詳細に検討すると共に, その抽出, 精製を行なったものである. まず, フォスフォフォリンに対するモノクローナル抗体を1次抗体として, ウシ胎仔脛骨骨端部を免疫組織化学的に染色すると, 骨芽細胞, 骨細胞及び石灰化軟骨表面の新生骨基質に強い陽性反応が認められたが, 骨端軟骨や骨稜中に残存している軟骨基質には, 反応がないことが確認された. 同様の結果は, 膜生骨化部位でも認められ, 骨稜の新生骨基質, 骨芽細胞及び骨細胞が強く染色され, 特に前骨芽細胞にも反応性が認められたことから, この物質が骨細胞の石灰化に重要な役割を果たしているものと考えられた. 次に, この骨に見出されたフォスフォフォリンと抗原類似性を持つ物質を抽出, 精製することを試みた. 即ち, ウシ胎仔長幹骨をグアニジン塩酸処理後EDTAにより脱灰し, 得られた抽出物から蟻酸不溶画分を除いてQセファロースカラムクロマトグラフィにより分画し, フォスフォフォリンに対する抗体と反応陽性の骨由来非コラーゲン性タンパク質を得た. この画分は, SDS-PAGEにより分子量71k及び63kの二種のタンパク質の混合物であったが, これをさらにセフアクリルS-300ゲル濾過, SDS-PAGEを用いて精製し, 71k及び63kの標品をそれぞれ純粋に単離することに成功した. 今後は, これら二種のタンパク質の物理化学的性質を明らかにすると共に, 石灰化過程における生理的役割, 組織内の微細分布をさらに追求していく計画である.
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