研究概要 |
コンポジットレジンは多くのすぐれた性質を有しているために, 保存修復の分野における役割はきわて大きい. しかし一方, コンポジットレジン自体には歯質とくに象牙質に対する接着性がないことが, もっともおおきい未解決の問題点となっており, 修復に先立って歯質の前処理や接着剤を介しての接着強化法が不可決の術式となっている. 本研究の第1年次では, まず低濃度の各種の酸処理剤による象牙質面のスメア層処理硬化を走査電顕で評価した結果, リン酸, クエン酸, アスコルビン酸などの3〜10%水溶液で十分な処理効果のあることが認められた. そこで, 処理剤の歯髄への影響を配慮し, 象牙細管の封鎖性を期待できる乳酸アルミニウムを0.5%あるいは1.0%配合した低濃度クエン酸処理剤を考案し, 成犬を用いての歯髄の病理組織学的研究を行なって良好な結果を得た. しかし, 牛歯の全象牙質窩洞への処理効果を辺縁封鎖性の評価によって検討した結果, どのような処理剤を用しても歯頚側窩縁からの微小漏洩を完全には阻止することができないこともあきらかになった. そこで第2年次では, 歯質への接着を阻害する因子と考えられている窩壁象牙質面上に付着しているスメア層の処理のために, Nd-YAGあるいはCO_2レーザーの照射を試み, スメア層の処理効果と象牙細管封鎖効果のあることをあきらかにした. さらに, レーザー照射による象牙質表面特性に及ぼす効果を検討した結果, レーザー照射によって接触角は著しく低下し, "ぬれ性"の改善されることがあきらかになった. また, レーザー照射によって, コンポジットレジンの象牙質面への接着性も向上する可能性も示唆された.
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