研究概要 |
本研究は, 接着性レジン(4-META/MMA-TBB)と強力に接着する合金表面構造と接着機構の解明を行い, それをもとに新しい接着用合金を開発することを目的とした. 得られた研究成果は次のようなものである. 1.Co-Cr合金とNi-Cr合金の表面構造と接着特性:2つの合金とも高温酸化表面よりもバフ研摩したままの表面が優れた接着性を示した. X線光電子分析(ESCA)によると高温酸化表面には数分子の吸着水が存在しており, この水分子を介して金属とレジンが接着していると考えられ, このことが研摩したままの表面よりも接着性が低下する原因と結論された. 研摩したままでは, Ni-Cr合金はCo-Cr合金よりも接着性が劣る. 反射電子回折によるとCo-Cr合金表面は非晶質構造であるが, Ni-Cr合金の場合, 下地合金からの回折線が得られた. Ni-Cr合金の接着性が劣るのは充分な不動態被膜が形成されていないためと考えられた. しかし, Ni-Cr合金を濃硝酸で処理すると液体窒素を用いた過酷な熱サイクルにも耐え, Co-Cr合金に匹敵する接着性が得られた. ESCAによると, 硝酸処理によって合金表面で, 4-METAレジンに対する親和性の劣るNiが減少し, 親和性に優れたCrが増加した. また, O_<1S>スペクトルの解析から, 硝酸処理によって, 不動態被膜が強固に形成されることが明らかになった. 2.接着性の優れた貴金属合金の開発:貴金属合金に対する接着性を向上される卑金属合金成分を検討した. 水中浸漬後も優れた接着性を示したのはSnとInで, これよりも劣るのは, Zn, Co, Cr, Cd, Cuであった. 最も劣っているのは, Ni, Mn, Feである. 金合金, 金銀パラジウム合金にSnやInを添加した. これに高温酸化処理を施し, SnO_2, In_2O_3を合金表面に形成し, これらの酸化物を還元するための臨床的な簡便な方法を確立した.
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