研究概要 |
顎関節や顔面, 頭頚部の疼痛を主症状とする顎機能異常は, 咬合異常や精神的ストレスによる咀嚼筋のhyperactivityが,その病因の一つと考えられているが, それらの因果関係は未だに充分には明らかにされていない. 本研究は, 咬合異常や精神的ストレスが, 咀嚼筋へ及ぼす影響について検討し, それらと顎機能異常の因果関係を明らかにすることを目的として計画され, 本年度は, 臨床的に顎口腔系の機能が正常である者を対象に, 咬合の変化が咀嚼筋筋電図におよぼす影響について検討した. 結果の概要: 1)噛みしめ時の筋活動量は, 各被験者において, 左右差, 筋差が認められたが, 全体的には, 一定の傾向は無かった. 2)歯牙タッピングやJawjerkによって, 咀嚼筋筋電図に誘発されるSPの期間(SPD)は, 左右差, 筋差がほとんど認められなかった. 3)全歯列が均等に接触するように良く調整されたスプリントの装着によって, 各被験者においては, 筋活動量, SPD共に多少の, 別々の変化傾向を示したが, 全体的には, 変化は認められなかった. 4)片側(左側)の咬合接触を, 暫時除去していくことにより, 筋活動量の減少, TSPの短縮, 及びJSPの延長傾向が認められた. 以上, 例数は, 少ないが, 咬合の変化が, 咀嚼筋に何等かの影響を及ぼしている可能性が示され, 咬合異常と顎機能異常の因果関係の一端が示された. 今回は, "咬合および精神的因子の咀嚼筋へ与える影響について"の検討を目的とし, 科学研究費補助金が支給され, 咬合と咀嚼筋との関係についての検討結果を報告した. 当初計画していた精神的因子と咀嚼筋との関係については, 未だ完結していないため, ここに報告できなかったが, 今後も検討を継続する予定である.
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