研究概要 |
牛歯を用いた研究から次のような諸点が明らかになった. 1)歯冠形成期には, エナメル質のCa, Pの含有量は大きく増加し, 一方Co_3, Fおよび有機質成分の含有量は大きく減少した. またエナメルアパタイトの結晶成長がa軸方向に認められたが, この段階ですでにc軸方向の結晶成長はほぼ完了していた. 2)歯根形成期の初期でも, Ca, Pの含有量は増加するが, その増加量は, 歯冠形成期に比し少なく, Co_3, Fの含有量の減少も認められなくなった. しかしエナメルアパタイトのa軸方向の結晶成長と有機質成分の含有量の減少は, 歯冠形成期と同様の割合で認められた. 3)歯根形成期の後半になると, 各成分の含有量の変化やエナメルアパタイトの結晶成長はほとんど認められなくなった. 4)しかし萠出期には, もう一度CaとPの含有量の増加と, Co_3と有機質成分の含有量の減少が, 歯冠形成期に比べて程度は小さいが認められた. 4CPおよびα-TCPセメントの物理化学的性質について, 硬化液を45%クエン酸水溶液, 粉液比1.5の条件で比較検討した. セメントの酸性度を, セメント表面に滴下した蒸留水0.5mlのpHで測定した. 4CPセメント, α-TCPセメント, リン酸セメントおよびカルキボキシレートセメントの中で, 4CPセメントが最も高かった. α-TCPのpH(pH4.02〜4.22)は, 最もpHの低かったリン酸セメント(pH3.09〜3.62)より高く, カルキボキシレートセメント(pH4.14〜4.62)よりやや低かった. 4CPおよびα-TCPセメントの破砕抗力は, 各々50.0と74.9MPaであり, カルキボキシレートセメントのADA規格No.61を満たしたが, 崩壊率は, 1.8と4.0%であり, 規格を満たさなかった. 生体内でのセメントの経時的変化を推察するために, リン酸緩衝塩類溶液中にセメント硬化体を侵漬した場合, 崩壊率は蒸留水中よりやや大きかったが, 侵漬期間中破砕抗力の低下はなかった.
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