研究概要 |
研究代表者らは, ラットにおける薬物や毒物の薬効・毒性の性差が, 雌雄ラット肝ミクロゾームに各々性に特異的なチトクロームP-450分子種が存在することで説明できることを確証し, その発現メカニズムなどにつき既に報告している. そこで本研究では, ラットにおいて見出された性に特異的なチトクロームP-450(P-450-male, P-450-femaleと命名)に対応するチトクロームP-450分子種がヒトを含む他の動物種にも存在するか否か, 存在するとすればその機能はP-450-maleと共通性があるか否かなどを知ることを目的とした. 種々検討の結果, 以下に述べる研究成果を得ることができた. すなわち, 1)抗P-450-male抗体と反応するチトクロームP-450は, ヒトおよび全ての実験動物種の肝ミクロゾームに存在するが, テストステロン水酸化酵素活性における抗P-450-male IgGによる阻害の程度の違いなどから, それぞれの機能は必ずしもP-450-maleとは同一ではないこと, 2)ハムスターの肝ミクロゾームにおいても特定のチトクロームP-450分子種に性差が存在し, ステロイド代謝や薬物代謝に関与しており, その発現はラットと同様に成長ホルモンによって調節されていること, 3)ビーグル犬とカニクイザルおよびヒトの肝ミクロゾームから, 抗P-450-male抗体と反応するチトクロームP-450を電気泳動上均一にまで精製し, それぞれの性質や機能の比較検討を行い, ステロイド代謝や薬物代謝やおけるこれら一群のチトクロームP-450の意義を明らかにしたこと, 4)特にヒトのチトクロームP-450(P-450-HM2)については, そのほぼ蛋白全長を含むcDNAクローンを得, 酵母で発現することができたこと, などである. 以上, 本研究においては, 当初の研究計画に一部変更を加えながらも, 全体的にみれば研究目的に添って研究を遂行し, 研究計画をはるかに超える成果が得られた.
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