研究概要 |
本研究は研究計画に沿って行われ, ほぼ所期の目標を達成することができた. (1)膜結合性NOPキナーゼの精製について:SDS-PAGE上単一バンドを示す標品をえ, 別途精製した細胞質性酵素との比較研究を行うことが可能となった. (2)膜結合酵素と細胞質酵素との比較:両酵素の物理的(ストークス半径, 偏比容, 分子量, 等電点など), 化学的(アミノ酸組成, ベプチドマップ), 速度論的諸性質など調べた限りでは両者に著しい差異は認められなかった. (3)抗細胞質酵素抗体の作製とその比較研究への応用:細胞質酵素に対する抗血清をえ, 抗原カラムを用いたアフィニテー精製法により特異抗体を作製した. この特異抗体はイムノブロット法により細胞質中のNDPキナーゼのみと反応したが, 膜蛋白成分について解析したところやはり同一分子量を示す成分と特異反応を示し, 精製した膜酵素との同一性が示された. (4)膜結合性NDPキナーゼとアデニル酸シクラーゼ系(Gs)との相互作用解析:この研究にはいくつかのアプローチが考えられ既に試みも行われているが必ずしも成功していない. 今回膜酵素とも反応する特異抗体を用いて解析を進め, その有効性が示された. あらかじめ放射標識したGsを含む膜を緩和な条件下に可溶化し, 免疫沈降を行うとGsに由来する放射活性が認められた. この放射活性は, 膜をあらかじめホルモンあるいはグアニンヌクレオチド処理することにより変動し, それはアデニル酸シクラーゼ活性調節に符号した変化であることが示唆された. 以上の結果は, 膜NDPキナーゼがGsと直接相互作用を示すもので, 従来私共が仮説として提唱しているごとく, 膜NDPキナーゼがアデニル酸シクラーゼ系に対しGTP供給系として機能しているであろうことを生化学的に裏付けするものである. 本研究を基礎にして, 今後詳細な解析を進める予定である.
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