研究概要 |
皮膚の非腫瘍性増殖性疾患である乾癬組織において, 細胞増殖と密接に関係する各種癌原遺伝子の発現および構造異常について, 腫瘍組織ならびに正常組織を対照に用いて解析し, 乾癬の発症病理におけるこれらの遺伝子の役割について検討した. 1.蛋白質レベルでの検討 リコンビナントv-H-ras癌遺伝子産物p21を免疫原とし, モノクローナル抗体rp12, rp28, rp35, rp38を作製した. このうちrp35を用いて, 乾癬組織の反応性を正常組織と対比して検討した. この結果5例の正常皮膚および乾癬患者の正常皮膚部分では, 表皮において基底細胞層のみが陽性を示した. これに対して, 13例の乾癬病巣においては, 基底細胞層のみならず, 有棘細胞層から表皮の全層にわたってras P21の産生を認めた. 以上の結果から乾癬病巣においては, ras癌原遺伝子産物p21が増量していることが示された. 2.mRNAレベルでの検討 乾癬組織および正常皮膚組織よりpolya+mRNAを抽出し, ノーザンブロット法を用いて, 細胞増殖に関与するfos, myc, H-ras, K-ras, N-ras, EGFレセプター, ホスホリパーゼA2, アクチン遺伝子の発現を検索した. この結果, fosおよびmyc遺伝子の転写レベルは乾癬組織で低く, 逆にK-ras遺伝子の転写レベルは, 正常皮膚組織に比べ高かった. また乾癬組織由来のK-rasのmRNAには構造異常が認められた. 以上のことから, 乾癬の発症機構に癌原遺伝子fos, myc, rasの異常発現が重要な役割をはたしていることが示唆された.
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