研究概要 |
1.マウスHprt遺伝子の第1イントロン中に, 不活性Xでは, メチル化され, 活性Xではメチル化されていないシークエンスがある. これらの部位のメチル化とX染色体不活性化との時間的な関係をEC細胞とマウス胚を利用して調べた. 結局これらの部位は不活性化以前にはメチル化されておらず, 不活性化後も, 数日間はメチル化しないままであることが判明した. また, この不活性Xに特異的とされるメチル化は卵黄嚢など胚外部では胚体部よりもはるかに低いことも判った. 従って, このようなDNAのメチル化は不活性化の開始には重要とは考えられず, むしろ不活性状態を維持するための二次的, 組織特異的な機構ではないかと思われる. 2.EC細胞株C86S_1A_1より安定な不活性Xを持つクローンMC12を分離した. この細胞にモロニー白血病ウイルスを感染させた後, HAT培地で選択したところ, X染色体が2本共活性であるクローンC_4とD_2が得られた. まだ因果関係ははっきりしないが, 恐らくウイルスがX染色体の活性制御部に入り込み本来の機能を損ったためではないかと考えられる. 3.C4とMC12より核タンパク質を抽出し, ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって比較したところ両者間に明瞭な差を認めた. 46kd付近にはC4には無いバンドが2本見出され, 71kdのバンドはMC12で特に多量に認められた. C4とMC12は共通の遺伝的背景を持ち, X染色体の1本が活性であるか, 不活性であるかが違うのみである. 4.マウス胸腺リンパ腫細胞株MTL1B3は早期複製型の不活性Xを持つ. この細胞とEC株OTF9-63を融合した所, 融合後第1回目の細胞分裂で, 早期複製型が晩期複製型に転換することが見出された. 線維芽細胞株STOとの融合でも同様であった. 従って MTL1B3はある因子が欠損しているために不活性Xが早期複製型になっており, これが細胞融合によって補われると晩期複製型になるものと解釈される.
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