研究概要 |
日本人の患者群での薬動力学パラメータをコンピュータプログラムNONMEMを用いて算出し, その平均値とバラツキからベイス理論によるパソコンプログラムにて患者個人のパラメータを推測し, 薬物投与設計の個別化に役立てる方法論の基礎的研究とその実践を行った. 初年度はNONMEMを汎用コンピューターで作動させ, 又, ベイズ法のパソコンでのプログラムを作製した. 同時に薬物血中濃度測定のための方法を確立した. 肝臓での薬物代謝能の指標物質として我々が日常摂取しているカフェインに注目してその体内動態を解析するため非観血的生体試料として唾液を選び幼少児でも簡便に唾液採取が行える様にろ紙法を確立した. 最終年度は薬物として, 大部分が腎臓で排泄される新規アミノグリコシド抗生物質二剤, 大部分が肝臓で代謝される抗不整脈剤リドカインを選び, 患者群でのパラルータ算出と個別薬物投与設計を検討した. 抗生物質二剤とも個人の薬物クリアランスはその人のクリアチニンクリアランスに良く比例した. 従って, 患者のクレアチニンクリアランスが解れば薬物の体内動態が良く予測できた. 又, 本剤の毒性発現に関与すると思われる末梢分画中の薬物量を血中濃度より予測するためのノモグラムを作製し, 本剤の投与設計のための方法論を確立できた. リドカインについては, 浜松医療センターCCUにて不整脈の予防或いは治療のために本剤を投与された53名の患者において投与開始後2-4時間, 12時間, 24時間の血中濃度を測定し, 前者より後二者を予測する事を試み, 又, これらの血中濃度データをNONMEMを用いて解析し, 日本人でのパラメータの平均値とバラツキを求めた. この値をベイズプログラムに組み込んで, 新たに12名の患者で本剤投与開始後2時間の血中濃度を測定し, その値より患者のパラルータを予測し, 12時間, 24時間の血中濃度を治療域に入れることを試み良好な結果を得た.
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