研究概要 |
この研究は, センチニクバエというハエの幼虫の体液から精製された, ガラクトース結合性のレクチン(Sarcophagaレクチン, 以後レクチンと略称)のリセプターを, 構造と機能の両面から解析したものである. このレクチンをマウスのマクロファージに作用させると, マクロファージが著しく活性化され, グルコースの消費や腫瘍細胞に対する障害性が増大する. こういった事実は, レクチンに対する有効なリセプターがマウスマクロファージ表面に存在することを示唆する. そこで, このリセプターを単離すべく, マクロファージの膜の可溶化蛋白の中から, レクチンをリガンドとするアフィニティーカラムに結合する蛋白の精製を試みた. その結果, 分子量170Kと110Kの二種類の蛋白がこのカラムに結合し, ガラクトース溶液によって特異的に溶出されることがわかった. 従って, この二つの蛋白はレクチンリセプターの候補ということになる. 次に, 各々の蛋白をSDSボリアクリルアミドゲル電気泳動により精製し, モノクローナル抗体の作製を試みた. その結果170-K蛋白に対する2種類のモノクローナル抗体のが得られた. この抗体を使って, レクチンリセプターを更に詳しく解析した結果, リセプターは全体の分子量が460-Kで, 170-K, 110-Kのサブユニットがそれぞれ2個ずつ結合した構造であることが明らかになった. そして, レクチンが結合する部位はおそらく170-Kのサブユニットと思われる. 次に, このリセプターにレクチンが結合すると, マクロファージ内でどのような変化がおきるかを解析した. その結果, レクチンが結合すると, 経時的に細胞内のサイクリックAMPの量が顕著に減少することが明らかになった. この事実は, このレクチンリセプターを介したマクロファージの活性化には, GTP結合蛋白の中のNiが関与していることを示唆するが, その詳細な分子機構については, これから明らかにすべき問題である.
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