研究概要 |
内因系血液凝固の開始反応は, セリンプロテアーゼ前駆体であるXII因子が, 負電荷高分子物質との接触により, 活性型プロテアーゼに変換することによりひき起こされる. この反応は, 線溶液およびキニン系の開始反応でもあり, 生体恒常性維持に重要な役割を持っていると考えられているが, その生物学的意義は明らかでない点が多い. 本研究の目的は, (1)セリンプロテアーゼ前駆体が, 負電荷高分子物質と接触すると, どうして限定分解反応がひき起こされるのか, (2)XII因子の活性化反応は, invivoで, どのような生物学的意義を持っているのか, を明らかすることにある. 本研究により得られた研究成果は以下の通りである. (1)精製した凝固因子を組み合せ, 内因系凝固の開始反応を再編成し, XII因子の活性化反応を測定する反応系を確立した. この反応系を用いて, XII因子の活性化反応を解析したところ, 活性化反応は, カオリンやサルプチド, 多糖硫酸エステルの濃度や各セリンプロテアーゼ前駆体の濃度に依存するだけでなく, 金属イオン, とくに亜鉛イオンにより著しく促進され, また食塩濃度によっても大きく変化し, また, 血小板は強く阻害的に作用することが明らかとなった. (2)正常および高分子キニノーゲン欠損ラットを用い, 種々の炎症により血漿中に著しく増加するキニノーゲン(オーキニノーゲン)の構造解析をすると共に, ラジオイムノアッセイ法を確立した. また, ラット以外に各種実験動物の血漿の内因系凝固反応を, ヒトと比較しながら解析し, 非常に活性化されやすい動物(モルモットおよびラット)と, 非常に活性化されにくい動物(ウサギおよびスンクス)があることを明らかにし, XII因子の活性化反応の生物学的意義を明らかにするために必要な基礎的データを得た.
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