研究概要 |
ミトコンドリアのP-450の生合成とミトコンドリア内膜への取込みに重点を置いて研究を進めた. ミトコンドリア型のP-450としてはP-450(SCC)とP-450(11β)を用い, cDNAの塩基配列からアミノ酸配列が決定されたP-450前駆体の延長ペプチドが前駆体のミトコンドリアへの取り込みにおいて果している役割りを主として無細胞系を用いて検討した. まず, 延長ペプチドの種々な部分に対応する合成ペプチドが前駆体のミトコンドリアへの取り込みに及ぼす効果を検討し, 延長ペプチドのアミノ末端側のアミノ酸配列が重要であることが推定さた. そこで, P-450(SCC)のcDNAの塩基配列の改変によって延長ペプチド部分や成熟型ペプチド部分に様々な改変を加えた前駆体を作り, 又, 改変を加えた延長ペプチドを他の蛋白質分子のアミノ末端につなげた退成分子も作るなどして検討した結果, 延長ペプチドのアミノ末端側15-20ケのアミノ酸残基から成るアミノ酸配列が前駆体のミトコンドリアへの結合と取り込みを支配していることを確認した. この部分には3ケの塩基性アミノ酸が点在しているが, それらを中性アミノ酸で置換すると前駆体はミトコンドリアへ取り込まれなくなり, ミトコンドリアへ選択的に取り込まれるために必要なアミノ酸配列の特性も明らかにすることができた. ミクロゾーム型のP-450についても, ミクロゾーム膜へ組込まれるために必要なアミノ酸配列はアミノ末端にあるので, 種々のP-450のミクロゾームとミトコンドリアへの分布は, それぞれのP-450分子のアミノ末端部分の一次構造によって決定されていると結論できる. 無細胞系を用いて得られたこのような結論を細胞について確認するため, 酵母及び培養動物細胞を用いてP-450のCDNA, 改変cDNAを細胞に導入して検討を進めている.
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