研究分担者 |
飯塚 哲太郎 慶応義塾大学, 医学部(現理化学研究所無機化学部門主任研究員), 助教授 (30029475)
渡辺 芳人 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (10201245)
三谷 芙美子 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (60041852)
牧野 龍 慶応義塾大学, 医学部, 講師 (40101026)
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研究概要 |
4種類のヘム酵素の酸素および一酸化酸素錯体の電子構造を振動スペクトル(赤外および共鳴ラマン)法により解析し, それらの結果の相互の比較からチトクロムP450camの酸素活性化機構の解析を試みた. 1)有機基質のエフェクターとしての機能;トリプトファンニ原子酸素添加酵素との比較から, 基質カンファーはヘム鉄に結合した配位子と相互作用する位置に結合しヘム鉄に結合した配位子に立体障害を与えること, その結果配位子間の結合が弱まることが判明した. 2)酸素化型P450cam中のO-O伸縮振動;赤外及びラマン分光法による解析からO-O伸縮振動は1141cm^<-1>に位置している事が判った. この値はミオグロビンのそれと大差なく, その電子構造はFe^<3+>-O^-_2と記述される. なおミオグロビンと異りP450camの酸素錯体は一種類の構造(conformer)をとるものと思われる. 3)プチダレドキシンのエフェクター効果;電子伝達蛋白質であるプチダレドキシン(Pd)はP450camと化学量論的に結合し, ヘム鉄に結合した配位子の伸縮振動を低下させた. この結果は, その結合により酸素などの配位子の配位子間(O-O)の結合が弱まること, 言い換えるとPdの結合に伴い配位子は活性化されるものと思われる. 上記1)と3)の結果は青酸(CN-)複合体を用いた^5NNMR法による解析からも示持された. 4)チトクロムP450の真の反応中間体としてペルオキシダーゼのcompound I及びIIと同様な構造を持つ中間体の生成が示唆されている. しかしペルオキシダーゼについてすら中間体の構造は不明のまま残されていた. 我々はヘム置換, 金属置換酵素のcompound IIの構造をラマン分光により解析し, その構造はFe(IV)-OHではなくFe(IV)=Oであることを確証した. 今後はチトクロムP450camの真の中間体の検出, 酸素化型酵素に及ぼすPdの効果を検討する予定である.
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