研究概要 |
マウス・フレンド細胞の再分化に関する細胞内因子を同定するために細胞融合, 細胞質融合で得られた知見をもとに実験を行った. その結果, すでに我々が見出した分化誘導因子(DIF-I)と異なる新たな分化誘導因子, (DIF-II)が見出された. 本因子はDMSO HMBA処理した細胞の細胞質中に処理後6時間後に最高値に達して誘導される. しかし, 活性はすぐ減少し, 一過性の性質を示す. この活性(DIF-II)の誘導はまた, cyclolexinideで阻害されることから, 蛋白質合成を伴っていることが判明した. また, TPAで阻害され, フレンド細胞以外の細胞での誘導はみられない. また, 分化誘導欠損細胞株においてはその誘導はみられない. 以上の結果は前に行った細胞および細胞質融合の結果とよく一致する. DIF-IIはタンパク質性であり, 分子量は25万以上であると考えられる. 一方, マウス・胚性腫瘍細胞(F9)細胞の細胞分化の機構を探るために分化誘導マーカーを発現するプラスミドベクターの開発を行った. われわれが先に見出したL因子がこの目的に適当であるかどうかを検討した. そのためMuLVなどのプロモーター・エンハンサーの下流域にCAT遺伝子をつないだ発現系をL因子中に組み込み, F9細胞中でプラスミドとして確立させた. この細胞をレチノイン酸で処理するとCAT遺伝子の誘導発現がみられたことからこの系は細胞内分化誘導因子の解析単離のための新しい実験系を提供するものと思われる. 以上末端分化(フレンド細胞)初期分化(F9細胞)の相異なる実験系を用いて細胞分化に関与する細胞内分化誘導因子の検出・同定のための基礎研究を行ったものであり, ほぼ当初の目標を達したと思われる.
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