研究概要 |
分裂酵母S.pombeの温度感受性変異nuc2-663は制限温度下核分裂におけるスピンドル運動を特異的に阻止する. その結果, 短いスピルドンは形成されるものの, 伸長することができずに停止する. この時染色体は凝縮し, 中期プレート様構造を形成し, 短スピンドルはこれに垂直に位置する. すなわち, nuc変異は核分裂中期より後期への遷移をブロックするようである. 野生株および許容温度下Dのnuc変異株では, スピンドルは約5倍に伸長する. nuc2^+遺伝子をクローン化した. 塩基配列の決定さらにRNaseプロテクション実験からイントロンの存在の決定により, 予想されるアミノ酸配列が求められた. 665個のアミノ酸より成立し, 分子量76000で, 内部に反復単位を持つ. 大腸菌においてnuc2タンパクを大量に生産し, 純化後, 抗原として用いウサギより抗血清を得た. この抗血清を用い, 分裂酵母エキストラクト中に分子量67000のポリペプチドp67を検出した. このp6D7は, 分裂酵母におけるnuc2^+遺伝子を多コピーにすると増産されたことから, nuc2D^+遺伝子によってコードされることが明らかである. 細胞分画およびウエスタンブロッティングにより, p67は核分画に存在することを見い出した. 核分画中の不溶性部分に主として存在する. この不溶性画分は, 2MNaCl, 25mMLISに不溶なのでいわゆる核骨格もしくは核マトリックス部分と類似する. nuc2タンパクは可溶性のp76前駆体を経て不溶性になるようである. p67は, 動原体タンパクのような核骨格様タンパク, もしくはスピンドル装置内で核マトリックス類似の挙動をするのかもしれない. もし動原体タンパク質であるなら, これがスピンドル運動を調節することになり大変興味深い.
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