研究概要 |
我々は, これまでに細胞運動における非筋アクチンの役割りを明らかにする目的で, Fアクチンの伸長端に結合し, その伸長を阻害することが知られているサイトカシンBを用いてアクチン変異株を分離し, その性状を解析して来た. この変異株は他のサイトカラシンに交叉耐性を示し, サイトカラシン結合能が低下していた. また, この変異株ではβ-アクチンが消失し, 代りに等電点が酸性側に移行したβ´-アクチンが見られる. このアクチンはβ-アクチンが合成後に修飾されたものではなく遺伝子の一次生産物であることも, polyA^+-RNAを用いた実験から明らかにされている. 本研究は, この変異株のβ´-アクチンがサイトカラシンに抵抗性となっているかどうかを, 精製アクチンを用いて直接しらべることを第一の目的として計画された. KB細胞およびCyt変異株からDEAE-セルローズを用いたイオン交換クロマトグラフィ, 重合と脱重合, Sephadex G150を用いたゲル濾過法によりアクチンを精製し, その重合に及ぼすサイトカラシンBの作用をしらべた. Cyt細胞のアクチンの重合は明らかにサイトカラシンBに抵抗性であること, および, この抵抗性はCyt-アクチンがサイトカラシンBに対する結合親和性の低下によることが明らかとなった. 更に, これらのアクチンからβ-, β´-, γ-アクチンをハイドロキシアパタイトを用いたカラムクロマトグラフィで精製し, それぞれの重合に及ぼすサイトカラシンBの阻害を見ると, β´-アクチンのみが抵抗性を示した. 以上の結果は, Cyt変異株のβ´-アクチンがサイトカラシン抵抗性を担っていることを明確に示し, サイトカラシンの細胞における作用点がアクチンであることを, ほヾ証明したと言って良い.
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