研究概要 |
諸々の生理現象における周期性は, 生体が示す特性の中で, 特に興味深いものである. 巨大アメーバの一種, Amoeba proteusの運動の制御にCa^<2+>依存のアクチンの燐酸化が重要な役割をしていることを強く示唆する結果が本研究者らによって得られている. そこでアメーバ内のCa^<2+>の存在様式を時間的・空間的にしらべるために, Ca^<2+>-光・蛋白質であるエクオリンをアメーバ内に顕微注射してその全発光量を径時的に測定すると, アメーバ内でCa^<2+>濃度の急激な上昇が数分の間隔で断続的にくり返されていることがわかった. また超高感度ビデオシステムを用いてエクオリンの発光を映像として撮え, Ca^<2+>分布の空間的・時間的変化をビデオ記録し, くわしく解析した. 活発に運動しているアメーバでは, 数分の間隔で強く発光する部位があらわれた. この数分間隔の強い発光は, アメーバの内在的なCa^<2+>濃度の周期性を反映するものである. この発光部位でのCa^<2+>濃度は10^<-5>Mのオーダーであった. Ca^<2+>濃度上昇によるアクチンの燐酸化を介しての細胞質の局所的ゾル化が複雑なアメーバ運動を制御していると考えられる. 真性粘菌Physarumの変形体をカフェインで処理して遊離される原形質滴は中で活発な周期運動を示し, Ca^<2+>が関与していることが知られている. エクオリンによってCa^<2+>の局在をしらべたところ, 活発に運動している滴中では顆粒質後方部位に強い発光がみられた. この部位はゾル化の部位に相当し, 粘菌の場合もCa^<2+>濃度上昇に伴う局所的ゾル化が, 周期運動に関与しているものと考えられる. 粘菌変形体から切り取った小片は, 3-5分の周期で収縮-弛緩をくり返す. 偏光および蛍光顕微鏡による解析から小片内のアクトミオシン繊維束の組立てと分布は収縮周期と同期して変化する. 繊維束は収縮時に形成され弛緩期に解体されるが, アクチンのG-F変換は繊維束の形成・消滅に重要な役割はしていないことが示唆された.
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