研究概要 |
ポジトロン放出核種である18F標識ガラクトース(FDGal)の体内分布と代謝を検討し肝細胞に選択的に集積することを明かとした. その薬剤としての妥当性の検討の後, 臨床利用を開始した. 肝硬変患者でのFDGalの肝内集積の低下を確認した. 更に, このトレーサーが肝癌に集積することが分かり肝癌の画像化と質的鑑別診断を目的として研究を行った結果, ガラクトースが, 高率に原発性肝癌中に取り込まれることが判明した. つまり肝癌が肝細胞としての特質を残しているわけで, これにより肝癌の質的画像診断が可能である. FDGalの肝癌への取り込みは, 症例毎に異なり, 癌細胞の分化度の程度に相関していると考えられた. 少数例に於いては, 肝癌でのFDGalの取り込みは, 健常肝組織よりも低く癌の陽性描画が明かでないものがあったが, 以下に述べる18F標識デオキシグルコース(FDG)を併用することにより, 肝癌全例の存在診断が可能であった. デオキシグルコースも, 葡萄糖類似糖であり細胞内で燐酸化され, 解糖または, グリコーゲン貯蔵系にはいる. 解糖の盛んな癌組織には, 極めて多量の^<18>Fが集積する. デオキシグルコースの燐酸化には, ヘキソカイネースが必要であるが, 肝に於けるこの酵素の活性は低く, 投与された^<18>F-FDGは, 短時間の内に肝から消失する. 一方, 腫瘍には, ヘキソカイネーズが豊富であるのでFDGは腫瘍内に蓄積する. この二つのトレーサーを併用すると, 原発性汗癌の質的診断が可能となる. すなわち, 原発性肝癌では, FDGal, FDG共に集積がみられるのに対して, 転移性肝癌では, FDGのみの集積となり, 非観血的に鑑別しうる. 今後は, 肝癌分化度, 引いては悪性度の診断にアプローチできると予想される.
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