研究概要 |
小腸脈管同時還流法については, 動物臓器還流用代用血液(FC-43エマルジョン)を用して粘膜損傷を与えることなく行なうことが可能な手法を確立した. 本手法は, 微絨毛への損傷もなくアミノ酸等の輸送担体もその生理機能を失なっていないことから, 血液中へ出現する薬物を定量することにより薬物の吸収機構解明に有力な知見を与え得るものであった. 加えて, 本実験系に, 新たに開発したアミノβラクタム系抗生物質の微量高感度定量法を適用し, セファレキシン, セフラジンおよびアンピシリンの消化管吸収をみた結果, これまで管腔内消失などのみかけの吸収から言われてきたこれら薬物の吸収性の差異を, 今回実際に脈管系への移行を測定することによって確認し得えた. さらに, 薬物間相互の吸収抑制実験の結果, セファレキシン, セフラジンの脈管系への移行は相互に抑制を受けること, および, シクラシリン, アンピシリン, アモキシシリンの共存によっても両者ともに強く抑制されることを認めた. しかしながら, 担体輸送系の知られているアミノ酸, ジペプチド類による阻害は極めて小さく, これら担体輸送系が寄与している程度は少ないものであることが示唆された. これらの実験結果より, アミノβラクタム系抗生物質の小腸からの吸収機構には, ジペプチド等の輸送系とは異なる薬物に特異的な系が関与している可能性が高いことが推察された. 一方, 四級アンモニウム化合物の吸収に関しては, プロパンテリンの高感度定量法を開発し, 本実験系による吸収動態の解明を行なった. その結果, 初期の段階で速やかな管腔内からの消失が見られたものの脈管系への移行は極めて微量であり, 粘膜表面への速い結合が存在することが示唆された. このことより, プロパンテリンの吸収機構には, 粘膜への速やかな結合又は取込みが関与するものと考えられる.
|