研究概要 |
二核期中期のタバコ未成熟花粉を単離し, パーコールの密度匂配遠心により均質な花粉集団を得た. この花粉を糖源や窒素源を含まない培地で一定期間(約3日)培養した後(飢餓処理), ガラクトース, グルタミン, アブシジン酸を含む培地で培養すると高頻度で細胞分裂が起こった. さらにこの分裂花粉を適当な培地に移植して培養すると半数性不足胚形成を経て幼植物体が得られた. 一方, パーコールの密度匂配遠心により得られた花粉を飢餓処理することなくグルタミンを含む培地で培養すると花粉の正常発生が起こり受精可能な成熟花粉が得られた. 同一の未成熟花粉の培養に際し, 培地へのグルタミンの添加の有無により半数性不定胚形成と花粉正常発生が人為的に制御できることから, 半数性不定胚形成初期に特異的に見られる生化学的変化を調査した. アミノ酸類, ヌクレオチド類では質的・量的変動が見られたものの花粉正常発生でも類似の変化が見られ不定胚形成に特異的な減少ではなかった. 一方, タンパク質, RNA, DNAの合成速度や新たに合成されるタンパク質のパターンについても不定胚形成に特異的な変化は見られなかった. ^<82>P無機リン酸を花粉に取り込ませタンパク質のリン酸化パターンを調べたところ, 半数性不定胚形成初期に特異的にリン酸化される四種のタンパク質(a〜d)が存在した. 一方, 花粉正常発生時には特異的にリン酸化される五種のタンパク質(e〜i)が存在した. そこで, 異なる発生段階にある未成熟花粉の培養, 種に濃度のグルタミン添加, 不定胚形成を仰制するサイトカイニンの添加, 不定胚形成を促進するEDTAの添加等様々の処理時におけるこれら九種のリン酸化タンパク質の消長について検討した. その結果a〜dの蛋白質は不定胚形成頻度の高い時にのみ出現することが確認され, また, a〜d蛋白質は顆粒画分に存在した.
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