研究概要 |
蛋白質の一次構造から高次構造を組立て立体的表示を行う方法を開発することは重要である. X線結晶解析によって高次構造が明らかにされている蛋白質と一次構造が似ていない例として, 医学的に高い関心が持たれているB型肝炎ウイルスの表面抗原HBsAg蛋白をとりあげた. 二次構造予測によればαヘリツクスともβシートとも予測される80-98位のアミノ酸配列は非常に疎水性が強く, 小型球形粒子や感染性のあるDane粒子を形成する上で最も重要な部分であった. 直径220A2F2(コード)の小型球形粒子を三角網数T=1の正二十面体と仮定するとその表面はHBsAg蛋白が60コピーで覆われることになり, 直径420A2F2(コード)のDane粒子はT=4と解釈され, 240コピーのHBsAg蛋白で覆われることになる. それらの正二十面体表面の最小単位の正三角形の一辺の長さが約110A2F2(コード)であるので, 80-98位はβシートであると結論された. 人間のHBsAg蛋白のみならず, Woodchuck, Ground squirrel, duckについての一次構造上のホモロジーから, それらに共通な高次構造はCys48-Cys48のS-S結合を持つ二分子会合体が基本骨格となっていることが判明し, 他のS-S結合の組合せも帰属された. HGS分子模型を用いてそれらのS-S結合を実現させ, 多数のサブタイプ認識に重要なアミノ酸残基を表面に露出させるようにし, 更に出来るだけ多くのβシート又はαヘリツクスを形成させるように組立てた. そのような分子模型を米国McDonnel-Donglas社製の磁気式原子座標測定装置3SPACE digilizerの上に木製の枠を固定してテグス糸で吊り, 感応コイルの先端にストローを固定して, ストロー先端の原子座標を算出する方式を開発した. 測定された原子座標はマイクロコンピューターのデイスケットに記録し, 次いで大型計算機センターに電送し, AMBERプログラムにより合理化した. それらを平行移動したり回転することによって小型球形粒子やDane粒子を覆う高次構造を得て, 三次元グラフイックスで表示した.
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