研究概要 |
(1)細胞周期の指標となる細胞表面の力学的性質: ウニの未受精卵の表面に弾性があるか否かは, 平本と米田の間の争点であったが, この度, いろいろの弾性係数を持つ球殻を押しつぶしたときの卵の形を, 数値計算により定めることができた. その結果, ウニ卵の表層にある弾性係数は, 平本の主張するような10^3dyne/cm^2ほどはありえず, 測定誤差を考慮しても高々その1/10程度であると結論された. (2)両生類卵の付活に伴う細胞内カルシウムの遊離: カルシウム感受性発光蛋白質(エクオリン)を注入したゼノパス未受精卵を付活し, 超高感度ビデオ顕微鏡で観察した結果, 卵内カルシウム遊離域が, 付活点に始まり, 卵表を波状に伝わることがわかった. このカルシウム波の出現域は, 付活波を構成する淡濃波の内, 淡色波(弛緩波)の部域と一致した. (3)アフリカツメガエル卵の受精に伴うカルシウム波と表層微細構造との対応: 受精卵におけるカルシウム波を観察するために, まず野生型雌の体腔からえられた卵母細胞にエクオルン注入し, これをアルビノ雌の体腔内に戻した. アルビノ雌から絞りだした未受精卵の中に現れる野生型の卵を取り出してスタインバーグ液中で媒精した. この方法に依って初めて受精に伴うカルシウム波を視覚化することができた. 人工付活時に現れるカルシウム波とは, 小さな違いを除けば本質的に同等であった. また, カルシウム波の出現部域は, 表層粒崩壊域と微絨毛の伸長域とに対応した. (4)雄性発生のタイミング: ウニの無核卵片に媒精して得た雄性発生胚の核分裂は, 融合核をもつ有核片由来の胚に比べて遅れるが, それは受精後の精子双星期の延長に専ら由来し, それ以前及び以降の発生のタイミングは正常胚と同一であることがわかった.
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