1、フレーゲ研究-(1)その意味理論の基本的特色を、実在論的な函数論的解釈意味論と文脈主義として確定し、また(2)意義の諸相を、言語哲学的、存在論的、認知的側面から明らかにすると共に、真理条件としての理想と認識論的諸規定とに、意義の核心を求める由縁を詳細に論証した。また、国有名詞論、間接文脈、文脈的表現の意味論について、詳細かつ徹底的に論じ、その研究成果を、『フレーゲの言語哲学』に集大成し、公刊した。 2、ラッセル・ウィトゲンシュタイン研究-論文「現代意味論における『論における『論考』の位置においては、フレーゲと対比してラッセル意味論の独自な面目を詳細に追跡し、次いで、フレーゲ・ラッセル両者に対する初期ウィトゲンシュタインの受容と反撥、並びに彼独自の<写像理論>と<事態>の形而上学の形成を『論理哲学論考』を中心に立入って明らかにした。と同時に、その意味論を形式化しつつ、タルスキのモデル論、カルナップ、クリプキム到子可能多世界意味論への先駆性を明らかにした。 3、論文「言語理解とは何か」においては、フレーゲ、ウィトゲンシュタイン、タルスキに連らなるD・ディヴィッドソンの真理条件的意味論と、反実在論的言語観を展開するM・ダメットの検証主義的意味論とを対比しつつ、言語理解の中心に位置する意味の理解について、基本的に真理条件的意味論を擁護する見地を主張した。他方また、指示詞や人称代名詞の如き基礎的な言語表現の習得に際しても、言語の習得が一定の言語社会への参加と一定の世界認識の枠組獲得の不可分離の関係にあることを、併せて論究した。 フレーゲから、クリプキに到る現代論理の意味論については、これらの研究成果をすべて投入し、近々一書を公刊する予定である。
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