研究概要 |
(一)元和期(1615-1623)は前後の慶長・寛永の両要素を含んだ過渡期である. その代表作は舟木家本「洛中洛外図屏風」(東京国立博物館所蔵)で, 元和期のあらゆる要素をもっており, それらを指摘しまとめることによって, 本研究のまとめとしたい. (二)構図. 「洛外洛外図」とはいうものの, 右隻は大仏殿一祇園社一四条河原を, 左隻は四条河原一四条室町・五条新町一二条城を中軸として, 繁華な場所に対象をしぼっており, 群集や生活・生計の描写に精密さを求め, 寛永期における地理と風俗との分離の方向を予告している. 六条三筋町の遊里の描写に, 服飾表現・群像構成について, 新しい傾向が顕著である. (三)人物の表現・群像構成. 人物の描写が精微になり, 表現や姿態を通してその心理の表現がみられ, 対人関係が生き生きと捉えられている. 街路あるいは屋内の一場面一場面を, 対人関係・心理描写の方向で充実して行けば, 寛永期の風俗画になる. (四)女性の群像. 被服を着た女性を中心に, 召使の女性(傘・荷物・小袖などを持つ場合が多い), 子供(男女)から成り, 小は2〜3人, 大は8〜9人のグループをなす. その種類は, (イ)家族的, (ロ)散歩・酒宴・観劇などで自己を顕示するもの, (ハ)乱舞(女性のみ, 男女入り乱れて)などがあるが, 女性グループと男性グループが視線をかわし対峙する場面もいくつか見られ, マフラー風の細長い布をイキに着用するなど, 新しいファッションを誇示する場面もある. (五)小袖文様. (イ)小型の単位文様を全面に散らす. 文様帯・色帯を肩裾に三分割(ABA)(ロ)単位文様の大型化・ABAがABABA・ABABABとなる. (ハ)縦縞・横縞・斜め縞の出現, (ニ)二三の大型文様中心のデザイン. (ホ)総鹿子文様の多用
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