研究概要 |
初期経験研究は, 知覚・言語等の発達には臨界期がある事を示した. 乳幼児期に効果的な環境を提供する事が障害児の発達にクリティカルである事は自明であるにも関わらずその方策を, 我々は持っていない. この時期に効果的働きかけを行える立場にあるのは親であってセラピストではない. 我々は上記の立場にたち, 親が「障害児をもった」という事実を如何に受けとめ, 悩み, そして, 乗り越えていくかについて考察した(第1論文). いわゆる「良い母子相互作用」が障害児母子で成立し難いのは「親に問題がある」のではなく子供が親の働きかけに反応しない, 出来ないことによる. この事は障害児母子においても, 親が種々の技法を身についる事が出来れば(覚醒レベル評価, 反応を引き出す方策, どんな反応が反ってくるかの知識等)「良い母子相互作用」が可能である事を示唆する(第2, 3論文). 効果的働きかけをするるには, 障害児の現状を適切に且詳細に把握する事を案する一方で, 彼らが如何なる認識の形式・論理を持つかについての考察を必要とする. 彼らの持つ認識形式に則って働きかけないと効果的とはならない. 第1論文で, 障害児と言えども「随伴性」の理解が存する事, 健常児の数十倍の反復により同時的に生じた2現象を関係づける事が出来る事, その定着に又数十回の反復が必要とされる事を示した. 障害児の発達の現状はしくについては未だ決定的な方策はないと考える. それは多くの診断・検査法が健常児の発達順序を基礎にして成立しているからである. 発達を「知識」の獲得順序, 「知識」間の相互依存性の高度化として捉え, 障害児が, 今, 獲得しなければ発達を歪めてしまう問題(達成課題)は何かを指示出来るものを必要とする. 我々はこの視点にたち, 新生児乳児の泣きの研究に取り組んだ(第5, 6論文). 又構音障害児の言語知覚と言語産出の解離が発達初期に存し, その解離をつなぐものとしての音節概念の獲得を論じた.
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