研究概要 |
生存高齢者204名, 死亡高齢者の遺族203名を対象にした二種の死生観を問う質問紙回答の解析の結果, 1.生き方や人がらが良質であるときは良質の「死生観」を, それらが不良であるときは不良な「死生観」とつながるものであることが示され, いわゆる「生命の質(quality of life)」が「死生観」を規定する重要な要因であることが考えられた. なお, 他者の臨終場面に立ち会った体験の有るとき良質の「死生観」と, 無いときは不良な「死生観」と関連する傾向が認められたことは興味深い事実であった. 2.「死生観」の質の良悪は, また死因となった疾患と関連することが明らかとなった. もっとも良好な「死生観」は癌群においてみられ, もっとも不良な「死生観」は脳出血群でみられた. 心臓病群は, 中間に位置するようであった. これらは, 遺族の媒介的回答によるとはいえ, ある程度まで, これら三群の異なる「死生観」や「生き方」を描きだしてくれたものとして, 今後のより詳しい研究が期待される. 3.因子分析法によって「死生観」の心理構造の分析が行われた. その結果生存高齢者群においては, 「生命の質と死の受容」因子が基本的な因子として抽出され, 他に「人生についての充足感-不満感」因子と「疾病予後についての不安」因子と仮りに名づけた合計三個が主要なものとして導かれた. これらによる「死生観」心理空間の説明率は, 全体の約45%であった. 一方, 遺族の回答による故人の「死生観」については, 「対人関係協調」因子, 「死の迎え方」因子, 「信仰と死の受容」因子の三つが主要なものとして抽出された. これらは, 生存高齢者で基本因子と考えられた「生命の質と死の受容」因子の大部分がそれぞれ分解して表現されたものと考えられた.
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