研究概要 |
研究当初に設定した目標は以下の三つであった:(I):基本感情がいくつあって, 何次元の空間で表わせるかを, SD法などの方法によって調べる. (II):哲学その他の文献を用いて, 感情の定義を行ない, それを記号化してみる. (III):基本感情に近い「おかしさ」の行動表現でもある「笑い」について, そのメカニズムを解明し, 計量心理学的に笑いの方程式を求める. これらの目的を達成すべく研究を進めてきたが, その成果を研究業績との関係で示すと以下の通りである: 目的I:論文1,2.発表1,5,6,7.目的II:論文1,3.発表2,5.目的III:論文4.発表3,4,8,9. 以下でわかる通り, この2年間は科研費のおかげで, 完全に「基本感情についての計量心理学的研究」に研究を集中させることが出来た. 明らかになった主な事柄は以下の通り:1)基本感情をSD法によってとらえる方法がかなり有効であることがわかり, 基本感情は7〜8ケであろうとしたが, どれどれが, その基本感情であるのかについては, 今後一層の研究が待たれる(目的(I)の解). 2)種々の感情が, 状況からどの様にして生ずるものかを定義の形で記述し, それを筆者が主として作成した約30種類の感情記号によって表現してみた. その結果, 感情の構造間の一致や対立性など, 多くの興味ある関係や規則を見通すことが出来る様になったが, 用いた記号がやや主観的との, 記号論理学者達(主として吉田夏彦研究室のスタッフ達)から批判を受けたので, これからは命題論理, 述語論理, 様相論理の知見を取り入れつつ, 記号化を改良してゆく必要を感じている. 3)「笑い」を, 桂米朝の落語テープを再生したものなどのイメージ調査によって研究した結果, かなりの程度「笑い」も予測可能なことを見出し, 米朝もこれを高く評価してくれている.
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