研究概要 |
研究1では、乳児期における情緒の発達の様相を明らかにすることを目的とした横断的研究を行った。まず母子相互作用場面での乳児の情緒の表出行動を分析するために、94組の0才児とその母親を統制場面においてVTR撮影した。94本のVTRについて、現在詳細な行動分析および情緒表出に関する評定を行っている。また日常生活での0才児の情緒表出や行動調整についての基礎的な資料を得るために前記の94名を含む1200名の生後6か月児の母親にアンケート調査を施行した。アンケートには乳児の情緒表出の程度や日常的な気分の質などを尋ねるためにCareyによるITQ(Infant Temperament Questionnaire)が含まれている。アンケートは郵送によって配布し、郵送によって回収した。現在1000名について配布が終了し、約850名について回収済みである。 研究2では、2〜3才児15名,4〜5才児17名,5〜6才児18名について情緒行動の発達および、情緒語の理解の発達が研究された。2才児は集合住宅の集会室に呼んで、3才児以上は大学の研究室に呼んで観察を行なった。まず、フラストレーション状況での情緒行動を記録するため、2台のヴィデオによって多角度からの撮影がなされた。また、その子どもの情緒語の理解を明らかにするため、インタヴューがなされた。研究費はヴィデオ・テープ代,ヴィデオから分析カテゴリーを用い記述するための謝金,およびコンピュータ処理のためのアルバイト代として用いた。 研究の結果から、情緒的表現や情緒理解の発達的変化がどのようなものか解明されつつある。成果の一部は、すでに大学紀要,学会において発表されつつある。研究1と2によって、乳幼児期の発達について新たな実証的資料を得ることができたといえよう。
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