研究概要 |
電気皮膚刺激の知覚特性に関して, 以下の3点からの実験的検討がなされた. (1)60Hz矩型波繰返し波形による知覚特性:電気皮膚刺激の知覚の基礎となる神経機構のそして受容体の機能をさらに検討する. 刺激波形を, これまでの単パルス刺激から60Hzの矩型波繰り返し波形に変化させ, ベキ指数, 知覚印象, 知覚される部位, 運動印象等の様相を検討する. (2)時間加重-ダブルパルスによる検討-:ダブルパルス刺激を使用して電気皮膚刺激における時間加重の様相を検討する. (3)パルス刺激へのマグニチュード推定:電気皮膚刺激へのマグニチュード推定の基礎となる2種の神経機構に関する仮定への示唆を得る. 単パルス刺激を使用して刺激レンジの高低, モジュラスの大きさによるベキ関数の変化を検討する. これらの実験目的により約10種の実験が試みられ, 特徴的な知覚特性をみいだし, 以下の結果を得た. また各種神経繊維と知覚との関係に関して考察された. a)主に電気皮膚刺激は神経繊維への直接的刺激と確認された. b)生理学による陰極説は支持されず, 様々の知覚が観察された. c)刺激強度が大きいか, 繰返し波形で運動印象が生じた. d)繰返し波形の場合ベキ指数は高く得られた. e)ダブルパルスによる時間加重は閾水準では部分加重か加重が無いが, 閾上で加重がみられる. f)ISIが7msecのダブルパルスで強い知覚が生じた. g)時間加重は末梢から中枢に渡ってのものである. h)低強度刺激範囲ではベキ指数が高く, 高強度では低かった. i)低強度では試行の関数としての順応があった. j)感覚レベルでの順応とベキ関数の勾配との依存関係は電気刺激に特有であった. k)低い電流では触覚をもたらす神経繊維系に関係し, 大きな順応を示した. 高い電流では痛覚のそれに関係し, 順応が無い. l)末梢受容体の介在が少ないこのような電気皮膚刺激の知覚特性がさらに調べられることは, 我々の知覚システム解明に大きな役割を担うであろう.
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