研究概要 |
緊密な二者関係において, 彼らの相互作用の多くの部分は, 互いに相手に対して抱く属性や期待によって支配されている. 本研究の目的は, 二者関係における相互のこのような複雑なパースペクティブの対応関係を, ファジィ論理分析によって, 体系的に確定することにある. 対人知覚法(IPM)の分析に, ファジィ集合論的アプローチを導入する意図は, IPMのブール分析(Alperson,1975)の利点に加えて, 回答者の感じるIPM項目の真偽の程度に関する情報を生かすところにある. IPMの各種確定値を, ファジィ論理関数によって導出するためのシステム化を図ったことにより, 直観によることなく, IPM値を客観的・一義的に導くことが可能となり, またブール分析の欠点である不自然なIPM関係の評価を改善することが可能となった. 夫婦関係を取り扱った小説を題材にすることによって, 複雑で多様な夫婦の関係の現象分析に, ファジィ論理分析が有効であることを検証した(藪内,1986;Yabuuchi,1988). また, 産業組織のリーダシップ研究における垂直関係アプローチ(vertical linkage approach)に対するファジィ論理分析の適用可能性を検討した(Yabuuchi,1988). それらの結果, 多種多様な複雑な対人関係の現象分析に, 本研究でおこなったファジィIPM分析のシステム化は, 実用的価値を有するものであることが示唆される.
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