研究概要 |
1.本研究の目的は, 注意による情報選択過程のERP表出を明らかにし, その選択過程の特性を探ることである. 2.聴覚実験:近年の多くの研究が選択的注意に伴う緩徐な陰性ERP(即ち, Nd波)を報告し, そのNdに初期と後期成分を認めている. しかし, これらのNd成分が注意による情報選択のどの側面を反映するのか定かではない. Ndを記録する基本的な実験事態では, ピッチの異なる短い純音を両耳に無作為な順序で呈示する. 被験者は一方の耳の刺激に注意を払い, その刺激中に時折挿入されるピッチが僅かに異なる刺激(標的)を検出する. 従って, この課題は注意/無視刺激(チャンネル間)選別と標的/非標的(チャンネル内)選別を要請する. N〓〓t〓nen(1982)はチャンネル間選別が注意刺激の心的イメージ(注意痕跡)との照合過程と仮定し, 注意痕跡との一致度が高い刺激ほど大きな(長く持続する)初期Ndを惹起すると予測する. 本研究の第1実験では, 従来と異なり, チャンネル間選択手がかりの空間位置とピッチを刺激呈示毎に規則的に変化させ, その変化幅を条件によって変えた. 結果はNdに条件効果が認められず, チャンネル間選別における刺激(変化)予期の重要な働きを示した. 第2実験では標的選別困難度の増加に伴う初期Ndの振幅増大と持続時間延長を認めた. 本結果は初期Ndがチャンネル内選別をも反映するという有力な証拠となる. 3.視覚実験:色の異なる文字と図形を重ねた刺激を用いて, 標的探索(チャンネル内選別)に関連した陰性ERP変化を検討した. 後頭部に局在して標的選別負荷に伴い陰性波が発達したが, 以前の知地とは異なり, 中心部ではむしろ陽性波が負荷で増大した. 本結果が重なり刺激に特異な効果か否か, 加えて, 視覚注意選別, 特に標的/非標的選別に関わるERP表出について, 今後さらに検討が必要である.
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