研究概要 |
R.E.ParkのRace Relation Cycleに関する理論はS.Lymanも指摘するように, この分野における研究の蓄積を促した先駆的研究であった. しかしその後のアメリカ社会の現実はParkの研究がひとつの仮説にすぎなかったことを教えている. 周知のようにParkはアメリカ社会における移民の同化に少ない期待を寄せていたのであるが現実のアメリカ社会はParkの期待以上に複雑であった. ParkのRace Relation Cycle論が必ずしも現実的でないという認識は直ちに新しい研究方針と分析枠を必要とする. 事実アメリカの社会的現実を反映してアメリカにおける人種民族研究の動向も同化主義派の一元的アプローチから多元論的アプローチへと推移を示している. こうした中, 現代の社会学が適応をめぐる問題について見るべき成果を生み出していることに注目したい. 特に, W.Mills,R.K.Merton,H.Becker等の研究は留意に値する. かつてH.KitanoはPark理論の限界についてふれ「このモデルが最高の機能を発揮するのは均等な機会が存在するときだけであり, しかも二つの文化の双方に相手側を理解しようとする意思があるときだけである」と指摘した. このKitanoの指摘は適応と逸脱の問題を文化目標と制度的手段の関係として扱うMertonの考えに結びつく. そしてさらに適応と逸脱を社会構造の所産と見るMillsの認識にも重なる. 一言でいえば, 移民の適応に関する研究における同化理論の限界は移民の適応の問題を社会構造, あるいは文化的目標と制度的手段との関係と結びつけて理解する姿勢の弱さにあった. 移民の適応をめぐる社会学的研究は, 今後, 何よりもそうした反省のうえに立って進められるべきであろう.
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