研究概要 |
本研究の対象である日本社会学会山口大会は、昭和56年11月23〜24日の2日間にわたって開催され、地方大会としては異例の参加者809人を集める盛況を呈した。本大会では初めて「公開テーマ部会」が組まれ、参加した70名の市民との交流・情報交換がはかられた他、会場に郷土物産品コーナーが設けられるなど、開催地域との接触を深める試みがみられた。以下、大会参加者を対象に実施したアンケート調査を中心に、当大会イベントの社会的効果を探ってみる。(有効票355,回収率48%)〔1〕経済的効果:大会参加者の5割以上が観光を行なっており、それも反映して宿泊地は山口市・小郡町以外で24%,県外8%を含めてかなり分散している。みやげを買った参加者は65%,またタクシー,国鉄山口線,市内飲食店は60〜80%の利用率,在来線バス,市内飲み屋は4割前後の利用率である。参考にした情報源としては市販のガイドブック,知人の紹介,会場で配布したパンフレットといったところが多い(30〜35%)。参加者自身、65%が開催地のメリットにつながると評価しているが、実際にかなり県下広範囲にわたるなにがしかの経済的効果があったことが推測できる。〔2〕社会的効果:地元の人とかなりつっこんだ話をした人は5%,少しは話をした人を加えても18%程度である。しかもそのうち5割は以前からの知り合いということであり、新たな社会関係の創出はごくわずかである。しかし参加者の間では、地方学会によって「地方の実情がわかる」(83%)あるいは「学問の宣伝になる」(56%)という意見も強い。学会そのものについては、運営等の中央集中化防止,参加負担の均等化,地方若手研究者の学会参加の促進といった内部効果が、いずれも8割前後の評価を受けていた。今大会に限った効果測定は困難であるが、当調査の自由回答や公開部会参加者アンケートのなかに、わずかながらこれらの効果を裏付ける回答は認められた。
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