研究概要 |
イギリスでは, 地域福祉, 在宅福祉の重視とともに, コミュニティワークの理論及び実戦についての研究成果が注目されるが, わが国ではそのような相関があまりみられない状況に対し, 日英比較の視点, また, 社会福祉の発達史的視点から検討し, その相違や要因を析出するとともに, 異なった条件のコミュニティにおいて具体的問題をとりあげ, 今後のコミュニティワークの意識と役割, 及び実践のの可能性を検討した. その結果, 日本の場合には戦前から特殊な社会事業の展開と, 国家, 地域, 家族そして個人の日本的特質によって, 欧米のようなコミュニティワークの展開がみられないまゝ, 地域福祉政策が推進されている. 今後の展開を検討するために特に考慮すべきけ特質を大都市, 地方都市, 農村について具体的事例をとり検討した結果, 次の3点が注目された. (1)行政機能の限界が住民ニーズに対応しえない状況に対して, 調整あるいは介入する機能がないまゝ放置されている. (2)民間機関が地域にかかわる行政, とくに社会福祉機関, 国民ボランティア, さらに労働組合もまき込んで地域ケア体制の整備を試みても, 家族の拒否的態度によって進展しない. これに対する介入機能もない. (3)地域社会に人的資源や集団その他の資源がある場合にもそれを活性化する機能がない. 以上の結果, 日本の地域福祉を展開するためには欧米と同様にコミュニティワークが有効であること. しかし, わが国の場合は日本的特質を考慮した技術でなければ効果的ではなく, そのためには, たんに欧米からの技術を移入するのではなく, 日本の社会的, 文化的土壌を基盤にした日本のコミュニティワークを確立する責務が課せられていることを報告書としてまとめた.
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