研究概要 |
本研究は, 我国近代以降の救貧行政の展開を地方自治体, すなわち県, 郡市町村のレベルで明らかにすることを目的としている. 明治以降の中心的救貧法である「恤救規則」が県, 市町村レベルでいかに運用されたかを具体的に検討することによって, 次の課題を追求した. 国家は救済機能を通じて, 国民生活にどのように関わっていくのか. その関わり方は, 我国の国民生活レベルにおける救済構造をどのように反映しているのか. さらには, 国家の救済機能は, 国民生活の何を変化せしめたのか. この課題を, 福島県, 山口県, 岐阜県, 滋賀県および大阪府の社会事業施設, 大阪老人ホームの各県と1施設を通じて検討することとした. 資料の制約から, 福島県, 大阪老人ホームの資料によって, 上記の課題を追求し, 次のような成果を得た. 1.明治42年度, 国庫救済打ち切りの府県への影響 2.県レベルの救貧行政の実態 3.恤救規則対象者の生活状況として, 労働, 収入, 生活内容, 住居, 相扶などを, 福島県の窮民調査によって明らかにし得た. 4.市町村救助の内容及び「隣保相扶」の内容について検討し得た. 5.大阪老人ホーム創設者及び事務員の記した日誌の解説を行った.
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