研究概要 |
この研究の目的は, 日本における農業生産組織の生成・展開との関連で, 農業後継者問題の諸相とその問題点を, 実証的研究を通して究明することである. 農業後継者とは何を後継するのか?それを具体的に実証的に明らかにすることが当面の課題である. 分析の視角は, (1)「農業」の後継(a日本の産業・職業としての「農業」の後継, b「家業」としての農業の後継), (2)「農家」(「いえ」)の後継, (3)「村落」(「むら」)の後継という三つの側面から, 農業後継者問題を構造的に把握することである. 調査対象は, 松本市島内地区, 佐賀県東与賀町の二事例である. 前者は, 上平瀬(農家11戸)が中核となり, 同集落以外のオペレーター3名は大部分の農作業を実施している. これは非組合員(あるいは非農家)を含む専門技術者集団による新しい試みで, 農民の主体的対応として注目される. 後者は, ほぼ部落ぐるみの農業生産組織の事例である. 新しく得られた知見を要約すれば次の通りである. 1.農業後継者問題は, 地域の農業生産構造, 産業構造(とくに農外労働市場条件, 村落の社会構造等と深くかかわっている. 2.農業生産構造の展開の仕方が, 「農家」, 「村落」のシステムの変容と関わりが深い. 3.日本における農業後継者問題は, 「家業」としての農業の後継の問題よりも, 産業・職業としての「農業」をいかに後継するかの問題が, より重要な課題であると考えれる. 4.「農業」の後継, 「農家」の後継, 「農村」の後継の諸相と問題点は, 地域的特性をもって展開しており, さらに継続的研究が必要である. 詳細は「報告書」, 「機関誌」等で報告・発表する.
|