研究概要 |
本研究は江戸時代後期における農民家族について播州赤穂の二つの村の宗門人別帳をもちいて, (1)家族構成の変化を通時的に分析し, 日本における伝統的家族のライフサイクルの型を提示すること, (2)平均余命, 結婚年令, 出生児数, 出生間隔, 死亡秩序などのライフサイクルにおける人口学的, 基本的出来事を追跡することによって家族周期のモデルを再構成することを目的とするものである. 分析にもちいたデータは, 二つの村の宗門人別帳であり, 一つは楢原村の1799年から1871年の73年間, 他の一つは1832年から1870年の39年間のものである. 以下に研究成果の一部を要約しておく. 家族構成の周期的変化は, 1)父母と子からなる核家族は→2)やがて子の結婚によって父母と子供夫婦の直系家族となるが, 弟妹は同居する→3)その後戸主の交代が行われるが, 弟妹は兄の世話になる→4)やがて弟妹の独立によって父母と子夫婦の直系家族となる→5)親の死亡によって再び父母と子からなる核家族となる. この1周期の長さはおよそ26年である. なお原村においては2)の段階で継嗣の結婚以前に弟妹が離家しているという現象がみられ, この場合の1周期の長さはおよそ25年となっている. 分析のプロセスで得たデータをもとにして家族の周期モデルを作成した. 直系家族の周期的変化は, (1)第1年目(継嗣結婚)から3年目(孫出生), (2)4年目(戸主交代)から9年目(弟妹離家), (3)10年目(父死亡)から26年目, 第27年目以降次の周期に入るがその場合には全く同じパターンを繰り返すわけである. 原村の場合には継嗣の結婚以前に弟妹が離家しているわけであり, 継嗣の結婚年令がかなり高くなると考えられ, 結婚年令の再検討をしてモデルを作成してみるつもりである. 今後は個人の生涯の軌跡, ライフコース分析を試みる.
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