研究概要 |
1.本研究においては、「文化 の概念を社会学の一般理論に適合し得るように規定した。すなわち、本研究において、日本文化を集権一分権軸においてとらえることは、情報(意味)の形成、発信機能が地域によってどのような較差があるか、という視点から日本の文化体系を分析することを意味している。本年度は、分析対象を高等教育とマス・コミに限定して作業を行った。 2.以上の前提に立って、本年度行った作業は、 (1)既設高等教育機関の学科・専攻数、学生数の地域比較。(2)大学-短大の地域分布図を市町村レベルで作成。(3)昭和51年度から60年度までの10年間にわたる全都道府県についての進学流動調査の分析。(4)出版物,新聞,テレビに関する地域別情報供給量の分析。(5)地方テレビ局の自主制作番組、自主編成番組の比率およびその影響範囲の分析。 3.上記の作業をもとに、次のような知見を得た(昭和61年12月20日の「地域社会研究会 (中田実名大教授主宰)において一部発表)。 (1)全国規模の最大の文化のコア地域として南関東圈(東京・神奈川・埼玉・千葉)が設定される。南関東圈はさらに同心円的に、関東全域,東北,甲信越,東海の一部(静岡),北陸の一部(富山)を包摂する。(2)次いで、中文化圈として西近畿圈(京都・大阪・兵庫)が設定される。(3)南関東圈、西近畿圈ののいずれにおいても、文化は一点集中型(前者は東京、後者は京阪神)の空間分析を示している。(3)(1)、(2)に次ぐ小文化圈として東海圈(愛知・岐阜および三重の一部)と福岡=九州圈が設定される。(4)ミニ文化圈として、札幌=北海道,宮城,広島,そして沖縄が設定される。(5)これら中・小・ミニ文化圈から遠くなるほど、南関東圈の吸引力(影響力)が増大する。(6)今後、補完的な指標(政治、経済等)を加え、日本の文化体系に関するこの仮説を理論化してゆく。
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