研究概要 |
本研究の目的は, ロシア十月革命期の子どもの生活と教育について, 子ども時代にロシアに存住し, 今日, 日本に住んでいる人びと(主にロシア人)のききとり調査によって, 生き生きとした教育史を際叙述することであった. ロシア人からのききとり調査は, 神戸, 福岡, 長崎, 京都, 鎌倉, 札幌その他の都市で行われた. これまで, ロシア十学革命期の学校における宗教教育(「神の法」の教育)は, 1918年1月20日の人民委員会識布告によって禁止され, 宗教教育は普通教育学校では行われなくなったと叙述されていたが, ききとり調査によって, 1920年頃まで, 「神の法」の教科が教えられていたところもあったことが明らかとなった. また, 戦争のために, 教師の大部分は, 男の老人の教師か, 女教師であったこと, 学部の一部が兵舎として用いられていたこと, 子どもの小学校入学年齢は, 子どもの読み書き能力によって, かなり, 異っていたことが解った. 子どもが感じた十月革命後の新しい教育上の変化は, 手工科や労働科の新設や, 見学や生徒による発表の増加であった. 遊びについては, 十月革命後も, ほとんど変っていない. 野球に似た「ラプタ」という遊びは, これまでは, 男の子のみといわれてきたが, ところによっては, 男女一緒に遊んでいたことが解った. その他, ハルビンにおけるロシア人学校の子どもたちの生活と遊びについても明らかにすることができたが, 教育内容のほとんどは, 革命前ロシアと同じ内容であった. しかし, 外国語教育として, 英語, 中国語, 日本語が教えられていたことは, 革命前ロシアの教育とは異る新しい教育内容であった. 調査方法の改善と, ききとりをするロシア人の人数をふやしてゆくことが今後の課題である.
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