研究概要 |
1.アメリカお聾教育におけるコミュニケーション方法の変遷を, 19世紀初頭から1930年代までにわたって解明した. 初期の無音法, 手指法から1867年のクラーク枝での口話法の台頭, その後の口話法の発展の足跡を検討した. とくに20世紀に入っての40年間は, 口話法の隆盛期であることを確認した. 2.1960年代末にカリフォルニア・サンタ・アナ学区とメリーランド州立聾学校で台頭したトータル・コミュニケーションの教育理念, 方法論, およびその成果等について明らかにした. 3.1940年代からトータル・コミュニケーション台頭までの聾教育の動向をコミュニケーションと関係づけて, 教育目標, 早期教育, 学力, 統合教育等の点から考察した. 4.トータル・コミュニケーションの台頭に及ぼした要因を, 一次的要因と二次的要因に分けて, 分析, 考察した. 一次的要因として, (1)手指コミュニケーションの使用状況とその主張が存在したこと(2)ギャローデット大学の同時法やニューメキシコ校の指文字の早期導入などの試行的実践が展開したこと(3)両親聾者の聾児のコミュニケーション能力についての研究が進展したことを実証的に解明した. また二次的要因として, (1)口話法の困難性と口話教育についての不満足が存在したこと(2)手話言語への社会的, 学問的関心が高揚してきたこと(3)成人聾者の団体が聾教育における手指コミュニケーションの有効性について支持する見解を表明してきたこと(4)コーネットがキュード・スピーチを開発したことなどを実証的に考察した. 最近のトータル・コミュニケーションの展開の状況をさらに継続的に解明していくことが今後の課題とされた.
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