研究概要 |
本研究では, 以下のように, 西ドイツとオーストリアにおける教員養成の現状と改革動向について明らかにし, そこから得た知見に基づいて, わが国の教員養成のあり方についても考察した. 1.教員養成の現状について-(1)両国とも, 幼稚園以外の全校種の教員の養成は大学入学資格を取得した「教員志望者」を対象として, 教員の種類別に, 西ドイツではすべて学術的大学・芸術系大学において, オーストリアでは義務教育学校教員は教育アカデミー, 職業教育学校教員は職業教育アカデミーにおいて行われている. (2)両国のどの教員養成でも教職専門科目(教科教育法を除く)の修得単位数は多い(全体の25〜40%, わが国9〜13%). それ故, 教育実習も重視され, その期間は西ドイツでは校外教育施設・企業等での実習を含み数週間から十数週間, 試補制のないオーストリアの義務教育学校教員養成では事前・事後指導を含み30週間以上にわたっている. したがって, 両国の教員養成では, 専門教育の学問的深化とともに, 学校教育の実際に即した実践的指導力の育成が重視されている. 2.教員試補制について-西ドイツでは第1次と第2次教員国家試験の間に, 州により18又は24か月間の教員試補研修が人的・物的に充実した研修所・研修協力校で実施されているが, オーストリアでは教員国家試験に合格したギムナジウム教員のみ, 条件附採用期間中の1年間, 赴任校において仮勤務をしながら指導教員の下で研修を受けることになっている. 3.改革動向について-両国とも, 社会の進展に伴う学校教育内容の改善に対応した教員養成カリキュラムの改革, 児童・生徒数の減少に伴う教員養成規模の縮小, 失業教員対策などが積極的に講じられつつある. これらの点で, わが国の教員養成の改善充実, 実施予定の初任者研修制度などに示唆するところ大であるといえる.
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