研究概要 |
自由作文-学習文庫の系列における生活認識の発達については, <興味の複合>が鍵概念であることが明確となった. すなわち, フレネ教育における自由作文は, 所与の教育内容を修得させるための興味の再生産を意図するものではなく, 子どもの興味の本来的複合性を表現によって意識化させ, 交流させるための教育技術である. 興味を発展させるための教材群である学習文庫には, 相互の間に指定関係をもっているが, 歴史教材の分析により, 指定関係のネットワークには, 学問の系統性からの配慮がはかられていることが明らかになった. 今後に残された課題としては, フレネ教育の教材群を分類, 整理する"Pour tous classer"(分類法)の分析があげられる. 自由デッサン, 絵画の系列における感性の発達については, <内的イメージ>が鍵概念としてあげられる. フレネ教育においては, <内的イメージ>が鍵概念としてあげられる. フレネ教育においては, 「写生」が全くといってよいほど見られず, 表現のすべてが内的イメージや, それを軸としたメッセージとなっている. このことからもうかがえるように, 表現に対する基本的な考え方は美術思潮でいわれるところの「表現主義」の立場である. フレネ教育の美術表現で見おとせないのは, それが巾広く生活と結びつき, 生活化していることである. 多様な表現活動が可能となるような環境が, 学校のなかに組織されている. フレネが示した1〜7才の子どものデッサンの発達段階表によって, 感性の発達を検討中である. 学習の個性化は, 従って, 子どもが生活のなかで<何に><どのような>興味をもつのかが重要な要素となる. 学習の個性化は, 個性化を包括しており, また, 表面を媒介とした認識や感性の交流という学習の協同化に対応する個人化を含んだ概念としてとらえられるであろう.
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