研究概要 |
音声言語が未成立な精神薄弱児の指導者とのコミュニケーション行動を2年半にわたって追跡, 録画し, その分析からコミュニケーションの成立過程における両者の行動, 意識の変容の様相を検討した. 観察は日常生活場面とし, 食事時, 保育所登所時, 自由遊び時, 母子遊び時で行ない, 2年半の記録を各場面ごとに整理し, 文字化を行なった. また, 音声言語が未成立な子どもの母親に対する援助の資料を得るため, 月例の母親教室, 親子合宿を実施した. そして, この記録から, 母親援助のために必要な項目の整理・分類を行なった. 得られた知見は下記の通りである. 1.食事場面の記録からコミュニケーション行動を抽出し, その変化の過程を分析したところ, 次のことがわかった. ・保母の関わりは, 受容的から積極的, 非言語的から言語的へと変化する ・両者が相手の意図を了解していく過程では, 互いに相手の行動をじらしたり, くり返したり, からかうように対応しあう場面が見られた. そして, このくり返しや, じらしが相手の意図を分節化したり, インデックス化したりするうえで有効と考えられた. ・長い間つづいたやりとりにおいて, コミュニケーション行動の変容が顕著であった. 2.音声言語出現の条件として, 相互交渉における役割の交替, 単純な構造のやりとりが必要と考えられた. 3.母親援助のために必要な項目として次のような内容を指摘した. 母親と周囲の人々との関係の調整. 家族関係の調整. 母親自身の生活の充実. 将来への見通し. 育児不安の解消
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