研究概要 |
昨年度の自傷行動が三才より生じ, 25才に至る迄持続し, 拘束衣, ひも等の抑制が行なわれた自閉症の青年を継続観察した. 昨年は, 本コロニー, 中央病院における治療を中心に, 自傷行動と身体拘束の関連を検討した. 本年は, 62年1月頃より, 家庭の近くの精神薄弱者更生施設で入所募集があり親の希望で試験入所を経て4月より入所したので, 月一回, 施設を訪問し経過を観察している. 観察の方法は, 自傷行動の頻発する食事の時間帯びを中心に, 作業活動, 歯磨き, 自由時間を, 二名で観察し, 午後は施設長, 担当者と本児用に作られた日誌を中心に討議してきた. 主要な経過の状態は以下の通りである. 自傷行動の抑制具については3月に, ひもより, 手袋のみの状態に移行し, 現在迄, 続いている. 2.首をかく, つねる自傷行動は低減し, 入所以来ほとんど問題とされていない. 頭叩きは依然として続いているが, 出血するほどのエピソードは一回のみである. 自傷の時間は, 食事, 前, 中, 後がほとんどである. 3.頭叩きに対する職員の対応は, 要求表現してとらえ, 要求を理解し, 施設の生活環境に許容される範囲で柔軟に応じ, 自傷が昂じないようにしている. 4.入所後, 4, 5ヵ月を経て自傷行動加増大した. しかし, この時も「ひも」等の拘束具を使用することはせずに, 本人の能力に過度に期待し過重な要求をしているため, ととらえ, 要求行動を低減した対応をしている. 5.これらの病院と違った比較的規制のゆるい対応によって, 就寝時に布団の上で職員とふざけ合う, 日常生活に必要な要求を職員の手を引っぱって示す. 他の寮生の指示に応ずる, などの社会的行動のひろがりも見えて来ている. 自傷行動と抑制具について, 昨年の病棟内での治療では, 抑制具の自己コントロールが行えるように指導したが, 今年では, これらの抑制具は手袋だけとなり, 今後, 一層, 自傷行動が低減すれば, 抑制具も必要なくなるだろう.
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