研究課題/領域番号 |
61510162
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
日本史
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
梅村 喬 愛知県大, 文学部, 助教授 (80092998)
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研究期間 (年度) |
1986
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研究課題ステータス |
完了 (1986年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1986年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 絹貢納 / 准絹 / 現物経済 / 11世紀 / 年貢 / 交易 / 流通 / 税制 |
研究概要 |
本研究では、平安時代社会経済の展開を貨幣流通の面から究明することをめざしたが、10世紀半ば以降、鋳造貨幣の消滅の後、奈良時代以前から民間に流通した物品貨幣が当代の貴族層の生活にも波及し、その経済生活ひいては、国家財政の運用をも規定してゆく実態の一端を明らかにしたと考える。人身支配を理念としていた律令体制の変質の顕著な現われは、土地別賦深に特徴的で、9〜10世紀を通して、各地域の田堵百姓層の代納の形態をとりつつ、生産物地代は次第に代物貢納の一般化へと向い、より経済価値の高い物資へと貢納品自体が固着してゆくようになり、11世紀半ばになると米と絹が大きな位置を占めるに至る。本研究では、先ず、絹貢納の広がりに注目し、奈良朝の蚕業育成政策を通して畿内とその周辺に拡大した蚕糸生産が、平安貴族の絹への尨大な需要を背景に、経済価値を高め、京への交易において、貨幣の代用物としての役割を担うようになるとともに、地子や年貢の重要品目としての意味を有するようになると結論した。以上の論証過程をへて、(1)古代的税制の解体と、鋳貨流通の後退の中で、絹が新しい価値物として10世紀以降注目すべきこと(2)土地売買上の代物に示される如く、社会的に流通したこと(3)「准絹」の用語に見られるように、価値換算の基準としての位置を与えられたこと。(4)国や庄園の交易において絹貢納が、11世紀以降、大きな意味をもつようになること、(5)これらは、中世年貢へのいわゆる税の単一品化を促がす契機となり、古代から中世の貢納の変化を橋わたしする役割を有したと考えられることなどの諸点を明らかにしえた。しかし、なお、古代交易からの解明や、絹以上に平安期の社会経済にかかわりの深い米年貢の形成について論及が不十分で、今後の検討テーマとしてゆくつもりである。
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