本年度の目的は三つあった。一つは埼玉県を中心に明治地方政治史を総合的に記述してみること、二つはその上で政党運動と地域利害の問題を埼玉県において実証してみること、三つは全国的に政党関係資料を収集することにより地方民会期の論稿を準備することの三点である。 第一については、現在執筆中で明治20年まで350枚ほど書いた段階である。明治期全体では700枚程度書く予定で準備中である。県政史が中心であり、維新期の府藩県三治制期の県政および藩政政革から書き起こし廃藩置県から地方民会期を考察し、自由民権期の政党成立と県政の関係を叙述した。第二は、埼玉県の明治期を通じての政党勢力の推移を政社および政党成立の変遷をふまえて衆議院議員および県会議員選挙の政党別得票を分析することにより、各郡および選挙区別の政党勢力の推移を考察している。あわせて政治運動の国政レベルと県政レベルの展開を政社、政党との関係で検討し、資本主義成立にともなう県内各地の生産基盤の整備にともなう県会への諸建議を分析している。そして県内各地の政党勢力の伸張を諸建議の相関をみることによって地域利害の実現のされ方を考察した。第三は、関西および東北の政党関係資料の収集により全国的な広がりをみたいと考えた。地方民会に関しては原稿の作成を始めているが、現在、第一が主となったため中断している。この課題は全国的展開につき考察している。
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