研究課題/領域番号 |
61510186
|
研究種目 |
一般研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
西洋史
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
桜井 万里子 東京学芸大, 教育学部, 助教授 (90011329)
|
研究期間 (年度) |
1986
|
研究課題ステータス |
完了 (1986年度)
|
配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1986年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
|
キーワード | 古代ギリシア / オリンピア / デルフォイ / エレウシス / ポリス / エトノス / アンフィクティオニア / 「神聖休戦」 |
研究概要 |
まず初めに全ギリシア的四大祭典の開催地の内、オリンピアとデルフォイの発堀報告書を使用して、両神域およびそこでの祭典の管理・運営の実態を追求した。オリンピアがエリスの管轄下にあったこと、デルフォイは隣保同盟(アンフィクティオニア)によって管理・運営されていたことは周知であるが、それぞれの管理・運営の内容の詳細に立入って調べると、それがギリシアに特有のポリスの原理・理念が効力を及ぼし得ない場であったことが明らかとなった。前471年までエリスはポリスとしての組織化を果しておらず、アンフィクティオニアの構成単位もポリスではなく、エトノスであった。これは、両神域の成立がポリス形成以前であったことを示すとともに、両神域にはギリシア世界古来の社会組織の構成原理が働いていたことをも伝える。神域の運営はこの原理に基くことが望ましいとされ、その後に出現した新たな組織であるポリスによる編成への変更は行われなかったのであろう。このような結論を得てから、アテナイの国家祭儀であり、全ギリシアから信者を集めていたエレウシスの秘儀に注目し、この秘儀開催時に実施された「神聖休戦(スポンダイ)」とオリンピアの「神聖休戦(エケケイリア)」とを比較し、それぞれの国際関係における機能の仕方を史料分析によって明らかにし、両制度が類似しながらも明確に異なっていたとの結論を得た。これら2種の制度の相違は、ギリシア人の国家に対する考え方と宗教意識とが、アーケイック期の間に変化したことを示していると推定される。そして、この変化が、ギリシア世界の社会組織の変化と関連しているとの想定も上の研究成果から十分可能となった。さらにこの社会組織の変化は、アテナイの姦通法が示唆するように、オイユスと国家との関係の変化と相関していることも、本研究課題である宗教的側面とは直接関連してはいないが、本研究遂行の際に附随して得られた成果であった。
|