研究概要 |
59年度および61年度に発掘調査を実施した大分県大野町の宮地前遺跡と大野郡犬飼町の松山遺跡の資料整理・分析と報告書作成を主として行った. その他, 両遺跡の資料整理・分析に関連する遺跡の資料収集調査を, 宮崎県児湯郡周辺と京都文化財団において実施した. また, 松山遺跡については周辺の表面採集と土層観察のための調査を実施して, 61年度の発掘調査の補強を行い, ローム層の堆積と遺物包含層の関係を確かめた. 宮地前遺跡については, 細石器文化層の上部に文化層が認められた弥生時代中期を主体とする土器, 縄文時代晩期の土器・石器の実測・トレースが終了し, 現在, 図版および観察表の作成にかかっている. 細石器時代の石器についても実測・トレースが終了し, 平面・垂直分布と個体別資料化の分析を進めている. 報告書用の原稿・図版・写真については, 4月上旬完成を目指して, 最終段階に入っている. 先年行われた平安博物館の宮地前遺跡の調査では不明であった弥生中期の城ノ越式土器や縄文晩期の石包丁形石器について新たな知見を得た. また, 細石器文化についても, 資料数は必ずしも多くないが, 石器群と包含層, さらに生活面の実態を把握することができた. いっぽう, 松山遺跡は資料整理のための基礎作業である洗い・ナンバリング・台帳づけを完了し, さらに, 平面・垂直分布図の作成, 接合資料および個体別資料化の作業もほぼ終わり, 石器の実測を現在進めている. 松山遺跡では, 12組53点の接合ができ, 特に18点の細石核ブランクの接合資料は「船野型細石核」の製作過程を考察する上で, 重要視される. また, これらの接合資料・個体別資料はこれから行う遺跡構造の分析で大いに利用できるものと考えられる. なお, 松山遺跡については, 63年1月に「大野郡松山遺跡の調査速報」として, 8ページの印刷物で, 石器群のブロックなど研究実績の一端を, 発表した.
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